文化財といえば何を思い浮かべますか? 建築から芸術作品、伝統芸能など有形無形問わず様々ですが、実は“泊まれる“文化財”もあるんです! 江戸時代にできた建物、明治にできた大浴場、創業から今も変わらず残るその建物はレトロな雰囲気満点! 普通の旅館とは一味もふた味も違い、夏目漱石や福沢諭吉などの文豪や偉人が愛した旅館も数多くあります。
そんな中から今回は関東エリアに絞って北からずらりと網羅的にご紹介。場所によってはいまは旅館としては営業を一時中断しているところもありますが、カフェや食事処として利用可能なところもあるので併せて載せています。非日常を味わいに、旅行の際の泊まる場所の候補としてぜひ検討してみてください。
<各エリアの泊まれる有形文化財>
・群馬県の泊まれる有形文化財
・茨城県の泊まれる有形文化財
・埼玉県の泊まれる有形文化財
・東京都の泊まれる有形文化財
・神奈川県の泊まれる有形文化財
群馬県の泊まれる有形文化財
1.一世紀以上の歴史を持つ大浴場「法師温泉 長寿館」(群馬県・みなかみ町)
法師温泉・長寿館の最大の特徴は歴史ある大浴場で、国鉄時代のポスターの舞台にもなった場所。1世紀以上の歴史を持つ建物の中は明治の雰囲気ムンムン! 温泉も効能も申し分なし。行灯がともる夜は雰囲気がさらに増し、これ以上ない非日常の空間に。温泉の後はこだわりの夕食を。水から米、野菜にいたるまで厳選した格別の味覚を、群馬の地酒をお供に楽しみたい。近くにはスキーやフジロックフェスティバルで有名な苗場が。行き帰りで立ち寄るのもおすすめです。ただし立ち寄り湯はお昼の時間帯のみなのでお気をつけ下さい。
アクセス:関越自動車道月夜野ICから車で約40分
詳細:http://www.houshi-onsen.jp/
2.『千と千尋の神隠し』のモデルの一つと言われる「積善館」(群馬県・中之条町)
草津や伊香保以外にも群馬には味わい深い温泉街がいくつもあります。”四万の病を治す”が由来と言われている四万温泉もそのひとつ。ジブリアニメ『千と千尋の神隠し』のモデルのひとつといわれる旅館積善館をご紹介。夜に煌々と輝く建物はまるで映画の世界に迷い込んだよう。元禄4年(1691年)に建てられ日本最古の木造湯宿建築といわれています。建物だけでなく温泉もオススメ。お風呂で注目なのは洋風を先んじて取り入れた大正ロマネスクの雰囲気をそのまま残した「元禄の湯」。本館と少し離れたところに山荘があり避暑地としても利用する人も。さらにもっと奥には「佳松亭」という最も厳かな建物が。ジブリに温泉、奥へ行くほど深みのある宿。これは行きたい!
アクセス:JR中之条駅よりバスで約40分
詳細:http://www.sekizenkan.co.jp/
3.あの司馬遼太郎も泊まった! 駅前の老舗「豊田屋旅館」(群馬県・高崎市)
高崎駅を降りてすぐ、再開発の進む駅前エリアの中で唯一当時からの厳かな姿を残す明治時代からの老舗旅館豊田屋旅館。かの歴史小説家、司馬遼太郎も泊まったこともあるそう。現在は残念ながら宿泊はできないものの、料亭として訪れることができます。料理は美味しく値段も良心的。有形文化財の中での食事はなかなか経験できるものではありません。ちなみに少し西に行くと富岡製糸場が。世界遺産を訪れる前のお食事スポットにもいいかもしれません。
アクセス:JR高崎駅より徒歩約5分
詳細:http://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2013121700047/
4.江戸時代にタイムスリップ! 雰囲気は当時のまま「伊勢屋旅館」(茨城県・桜川市)
アクセス:JR水戸線「大和」駅より8.9km
詳細:http://www.kankou-sakuragawa.jp/page/page000136.html
5.旅館内にカフェも併設。アンティークな空間 「橋本旅館/橋本珈琲」(茨城県・桜川市)

出典:https://www.facebook.com/hashimotoryokan/
アクセス:バス停旧真壁駅より徒歩で約10分/JR下館駅より車で約20分
詳細:https://www.facebook.com/hashimotoryokan
6.山岡鉄舟ゆかりの忠七めしが生まれた「割烹旅館二葉」(埼玉県・小川町)
創業250年以上の老舗旅館。東京からは距離も近く日帰りでも十分に行ける距離。目玉は旅館の中にある大きな日本庭園。とても凝っていて一見の価値アリ。明治の偉人、山岡鉄舟ゆかりの宿としても有名です。名物は鉄舟の「調理に禅味を盛れ」という言葉を受けて当時の館主であり料理人だった八木忠七が試行錯誤で創作した「忠七めし」。わさびや柚子などを盛り込んだ、薬味たっぷりのお茶漬けといった感じ。地元の食材を使った懐石料理と一緒に食べてみたいところです。
アクセス:JR小川町駅より徒歩約2分
7.蔵の街川越。島崎藤村も泊まった文化財「佐久間旅館」(埼玉県・松江町)
蔵作りの建物が建ち並ぶ「蔵の街」として有名な川越。都内からもアクセス良いので訪れたことのある方も多いのではないでしょうか。明治27年創業の老舗佐久間旅館の離れにある「奥の間」が登録文化財に指定されています。100年以上の歴史を持つ重厚な蔵屋敷で部屋の調度品も当時のまま。作家の島崎藤村もかつて泊まっていたそう。こんな明治の雰囲気を残す空間で、料理と地酒をいただくのは至福の時間です。残念ながら現在は老朽化改修のため宿は休業中とことですが料亭としては営業しています。再開したらせひ泊まってみたいですね。
アクセス:東武東上線かJR川越駅より徒歩約15分/西武新宿線本川越駅より徒歩約10分
詳細:http://www.sakuma-kawagoe.co.jp/
8. 江戸時代の間取りが今も残る「武村旅館」(埼玉県・桶川市)
江戸末期にできた旅館。現在泊まることはできず、残念ながら隣接するビジネスホテルに泊まることになります。それでも江戸時代の間取りが今でも残っているので一見の価値アリ。桶川は中山道の宿場町の風情が残る町。近くには史跡となる古い蔵がたくさんあるので蔵めぐりをするのもおすすめ。埼玉なので東京からも近いですよ。
アクセス:JR桶川駅より徒歩約8分
詳細:http://www.saiyado.com/ryopage.php?uid=rk086
9.文京エリアの静かな雰囲気をじっくり味わえる「鳳明館」(東京都・文京区)
東京都文京区本郷エリアにある文化財の旅館。都内ですがこのあたりは静かなので落ち着いて過ごせます。昔ながらの趣を残した建物はどこか懐かしい雰囲気。都内で文化財の宿に泊まれるなんてとても貴重ですね。素泊まりだと5000円前後から宿泊可。東京からだけでなく、東京に来た際の宿泊にも良さそうです。
アクセス:東京メトロ丸の内線、都営地下鉄大江戸線本郷3丁目駅から徒歩約10分
10.新宿から電車で10分でレトロにどっぷり浸かる「旅館西郊」(東京都・杉並区)
なんと新宿から電車で10分で最寄り駅に。近い! 少し歩くと「西郊ロッジング」というレトロな雰囲気ムンムンの建物が。戦前に建てられ今も残っています。旅館はこの建物と連結された隣にあります。周りに街並みは普通の住宅街といった感じですがこのあたりだけ昔にタイムスリップしたよう。旅館内もあえて昔の設備を使っているのかレトロなムードそのまま。門限が夜の12時なので東京を夜遅くまで満喫したい人は注意が必要です。
アクセス:JR荻窪駅より徒歩約7分
詳細:http://www.ryokan.or.jp/inn/28600
千葉県の泊まれる有形文化財
11.ローカル線で房総をめぐる旅へ「大屋旅館」(千葉県・大多喜町)
房総半島にある旅館。江戸時代後期に創業され外観も内装も当時のまま。正岡子規が学生時代に泊まったこともあるそうです。そして房総といえば海の幸。海の幸や野菜をふんだんに使った料理は食べてみたい! 千葉のローカル線「小湊鐵道」や「いすみ鉄道」で房総半島をめぐる旅なんていうのも面白そう。
アクセス:いすみ鉄道線大多喜駅より徒歩約7分
詳細:http://otakitown-ryokan-oyaryokan.jimdo.com/
12.勝浦タンタンメンも港町の朝市も楽しめる「旅館松の家」(千葉県・勝浦市)
江戸時代創業の純和風の小さな宿。建物の風情もさることながら、ここのオススメは房総の勝浦近海の新鮮な海の幸。それもリーズナブルな価格で食べられます。夕食はあわびか金目鯛の姿煮のどちらかを選べます。そこに地魚に海老、海鮮茶碗蒸しがつくなどボリュームは満点。旅館のすぐ隣では400年の歴史を誇る「勝浦朝市」が行われるので翌日はもちろん早起きで。帰りは名物「勝浦タンタンメン」で決まり!
アクセス:JR外房線「勝浦駅」徒歩10分
詳細:http://katsuura-matsunoya.com/
13.大正時代の洋館に泊まってみたい! 「かいひん荘鎌倉」(神奈川県・鎌倉市)
次は鎌倉から。都内からも近い定番の観光スポットですね。旅館があるのは由比ヶ浜。少し歩くと目の前はビーチです。サーフトリップにはもってこい。サーフィンだけでなく鎌倉大仏や長谷寺も。両方とも徒歩で行けます。外観は純和風の旅館ですがここは洋室がオススメ! 大正時代の雰囲気がそのまま残っています。そして料理は日ごとに変わる旬の懐石料理と満足度高し。人力車プランつき。
アクセス:江ノ島電鉄由比ヶ浜駅より徒歩約2分
14.ここはローマ? ステンドグラスのお風呂が幻想的「岩本楼」(神奈川県・藤沢市)
岩本坊、岩本院と名称が移り変わりつつ、なんと鎌倉時代から続く由緒ある旅館。江ノ島にあります。最大の目玉は有形文化財にもなっているステングラスのお風呂。光が差し込むと七色に反射し幻想的な雰囲気に。これは入りたい! 他には洞窟風呂なんかも。ここは個性的なお風呂がラインナップされていますね。お子さんとも一緒に楽しめそう。周辺の観光にも事欠きません。新江ノ島水族館へは徒歩10~15分ほど。海も近くレジャー向きの旅館です。天気のいい日は部屋から富士山が見えます。ビールでも飲みながら夕日に染まった景色を眺める……最高ですね。
アクセス:小田急線片瀬江ノ島駅より徒歩約13分
詳細:http://www.iwamotoro.co.jp/
15.アクティビティにクリエイティブに楽しみがいっぱい「茅ヶ崎館」(神奈川県・茅ヶ崎市)
湘南にある有形文化財の旅館。有名なのは庭に面した「二番」の部屋。映画監督の小津安二郎監督もここに入り浸りアイデアを考えていたよう。目の前が湘南の海ということでマリンスポーツプランが用意されているのが特徴。カヤックやサーフィンが楽しめますよ。コーチもいるので安心して参加できます。海で存分に遊んだ後に宿に戻って飲んで食べて、明治から続くお風呂場でゆっくりする、なんていうのはいかがでしょう? アクティビティのみならず、絵画教室や写真教室などクリエイティブなイベントも多く開催されています。
アクセス:JR東海道本線茅ヶ崎駅より徒歩約20分
16.与謝野晶子も泊まったことのある「対僊閣(たいせんかく)」(神奈川県・鎌倉市)

出典:http://www.tripadvisor.jp/Hotel_Review-g303156-d2177377-Reviews-Taisenkaku-Kamakura_Kanagawa_Prefecture_Kanto.html
こちらも鎌倉から。長谷寺の参道にたたずむ老舗旅館。明治末期に創業し120年以上の歴史があります。あの与謝野晶子も泊まっていたそう。2階にはお寺に使われている「蘭間窓(らんままど)」が付けられ独特の風格が。建物は関東大震災を受け建て直したようですが今なお戦前の空気がただよっています。夕食はつきませんが、近くには美味しいお店もあるのでそこは問題なし。近くには長谷寺の骨董通りもありますよ。
アクセス:江ノ島電鉄長谷駅より徒歩約3分
詳細:http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/keikan/ks19.html
17.渓谷美を堪能できる「塔の沢一の湯本館」(神奈川県・箱根町)
箱根にあるこちらの旅館は、江戸時代の蔵、明治時代の建物、内装は大正時代ということで指定文化財に指定。浮世画家の安藤広重の絵のモデルにもなりました。そして何といてもおすすめポイントは各部屋からの眺望。旅館の全室が早川渓谷が見え、客室露天風呂が付いているお部屋も。渓谷を眺めながら湯に浸かる……最高ですね! 料理は国産ブランドの豚を使ったしゃぶしゃぶが出ます。老舗の箱根温泉の旅館。文化財というだけあり歴史を感じる建物は存在感があります。「箱根湯本駅」からはバスが出ていますが、箱根のお店が並ぶ通りを抜けて徒歩で行くこともできます。
アクセス:箱根登山電車箱根湯本駅よりバスで約3分
詳細:http://www.ichinoyu.co.jp/honkan/
18.頭上に広がる48枚の絵画が圧巻の「萬翆楼 福住」(神奈川県・箱根町)
明治のおもかげが残る旅館。和洋折衷が随所に見られるこの旅館は文化財の中でも更に選りすぐられた「重要文化財」の指定を受けています(ちなみに現役旅館で重要文化財指定は国内初!)。数えればきりがないほどの文人が訪れたことがあり、萬翠樓の名は明治維新の傑人木戸孝允からもらった名とのこと。また、圧巻などが富士山や花の絵が48枚も敷き詰められた客室。この絵がある部屋は一度でいいから泊まってみたい! 客室だけでなくロビーや温泉まで明治時代の雰囲気で統一されています。そして何よりここは温泉地箱根! 旅館はもちろん、来たからには温泉めぐりもしたいですね。
アクセス:箱根登山電車箱根湯本駅より徒歩約5分
19.福沢諭吉や夏目漱石など、多くの文化人を魅了した「福住楼」(神奈川県・箱根町)
一世紀を越える貴重な京普請の数寄屋づくりの旅館。そのデザインや手法が認められれ登録有形文化財に。建物には最高級の木や竹を贅沢に使っています。ここは福沢諭吉や夏目漱石をはじめたくさんの文化人が泊まったことでも知られる旅館。建築だけでなく文化面の重要性も高く評価されています。まさに有形“文化”財の名にふさわしい旅館。「箱根七湯」と呼ばれる名湯に浸かりながら古き良き時代の雰囲気を味わいたいところです。
アクセス:箱根登山電車箱根湯本駅から車で約5分
詳細:http://www.fukuzumi-ro.com/
20.様々な表情を見せる1万坪の日本庭園「吉池旅館」(神奈川県・箱根町)
先ほど紹介した萬翆楼 福住のすぐ近くにある旅館。1万坪もある日本庭園は圧巻。庭園内の「旧岩崎別邸と茶室」が有形文化財として指定されています。池では500匹以上の錦鯉が泳ぎ、夏にはホタルも姿を現すそう。桜や新緑、紅葉などその季節に応じて違った表情を見せてくれます。ここに来たら併設されている「ステーキハウス吉池」にはぜひ行ってみてください。地元で30年も続く名店で、他の旅館に泊まっている人も食べに来るほど。カウンターに鉄板がついていて目の前で焼きあがる黒毛和牛は迫力満点です。
アクセス:箱根登山電車箱根湯本駅より徒歩約7分
21.銘木を使った重厚な「元湯 環翠楼」(神奈川県・箱根町)
400年も昔に建てられた温泉宿。希少な銘木を使った4階建ての建物は重厚な趣。「環翠楼」と名づけた伊藤博文をはじめ、数々の偉人が泊まりに来ています。近年、大河ドラマとなった篤姫もそんな中のひとり。とにかく館内の随所に風情がたっぷり溢れています。ここの露天風呂は6月になるとホタルが現れることも。この旅館に来たら渓谷に面した部屋をぜひ予約してください。景色が最高です。料理も部屋で食べることもできるので落ち着いて過ごすことができますよ。
アクセス:箱根登山電車箱根湯本駅から1kmほど
詳細:http://www.kansuiro.co.jp/
22.館内には江戸から続く石畳が。「箱根湯本ホテル」(神奈川県・箱根町)
23.湯河原の山景を愛でる「上野屋」(神奈川県・河原町)
江戸時代から続く老舗旅館。ここの温泉を求めてあの水戸光圀も泊まったほど。天然温泉は疲れに効く効能がいっぱい。昔から癒しの湯として親しまれています。足湯もオススメです。目の前に広がる湯河原の山の景色を見ながらゆっくりしたい。この景色はあの夏目漱石もよく眺めていたそうですよ。徒歩10分ほどの距離に名滝「不動滝」があります。他にも万葉公園も。上で挙げた他の箱根の宿とは少し離れてはいますが、その分名所には近いですよ。
アクセス:JR湯河原駅よりバスで10分
詳細:http://www.uenoya-net.jp/service/
関東だけでもこんなにある泊まれる有形文化財。少し足を伸ばすなら群馬の法師温泉や四万温泉などで雰囲気たっぷりの滞在を。近場であれば、何と言っても箱根がおすすめ。鎌倉とあわせて、週末サクッと行けそうです。個人的に密かに行ってみたくてウズウズしているのは都内の旅館西郊。新宿から電車で10分という近さは、金曜夜泊でも行けちゃうかも? ぜひ旅行の際は、宿泊地のひとつとして「有形文化財」の旅館もチェックしてみてくださいね!
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